日本国憲法公布から、すでに半世紀余り。この間、戦争の放棄を
定めた第9条に次いで、しばしば論議の的となり、また政争の具
となってきた条項が、第20条であった。
憲法20条は「信教の自由」と「政教分離」を定めた条項であ
るが、この「政教分離」の原則ほど、日本人に誤解され、偏った
受容をされている原則もない。憲法における政教分離の「政」は
国家を意味し、この原則は国家の宗教的中立を定めたものであり、
それに拘束されるのは国民一人ひとりや宗教団体などの私的団体
ではなく、国家である。にもかかわらず、日本においては「政教」
の「政」に字が政治を意味すると曲解され、宗教団体の政治参加
を制限し、宗教的バックグラウンドを持つ政党の政権参加を禁じ
た原則とみる謬見が幅をきかせている。
選挙や政党間の議論の中で再び、憲法20条が政争の具となら
ないように、今一度その意味を検証することが必要であると考え、
本書を企画した。(著者の)お三方はそれぞれ、憲法、なかんず
く信教の自由・政教分離原則について、長年にわたり深い研鑽を
積んでこられた宗教法学界の権威である。
本書が、読者諸氏が信教の自由・政教分離について正しい認識、
より深い理解を得るための一助となれば幸甚である。
――――「まえがき」より
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